Ap Lei Chau Days - 香港の日本食小売店運営での日々の出来事。

香港の漁村の小島の街市内で日本食品小売店を展開。前代未聞のこのビジネスを運営する中で見える事、感じる事、日々の出来事をつづります。

食品ロスを生み出す「欠品ペナルティ」は必要?を興味深く読んだ。

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食品ロス専門家 井上女史の記事を興味深く読んだ。

食品ロスを生み出す「欠品ペナルティ」は必要?

商売の原点を大切にするスーパーの事例

news.yahoo.co.jp

食品ロス。

これは日本だけでなく香港はもちろん世界中で問題になっている事で

食品ロスの背景には、本当に様々な原因が絡み合っていて

これよりあれを先に改革するべきだっ!というものではなくて

きっと、ありとあらゆる角度、例えば、小売側、サプライ側の会社の

ポリシーであったり、物流方法であったり、消費者一人ひとりの

意識であったり、物に溢れて暮らすことを成功の証と考える人々の

考え方であったり、本当に様々な事を同時に見直していく必要が

あると思うのだけど、なかなかそれが難しい。

だからこそ、井上女史のように世の中にある食品ロスに関する

問題提起をする立場の方も必要だと思います。

 

 

さて、小売業。

食品小売業で仕入れ担当している方は、どんなことを考えながら

今回の記事を読んだかな?と考えてみた。

 

 

当店は食品小売店といっても

海外の、日本食とは縁の薄い方々が多い田舎街の小さな小売店なので

日本国内の仕入れ経路や方法とはもちろん異なるし

欠品ペナルティや棚代も採用していないので、

記事中の日本の大手スーパーという立場とは全く異なる。

そういう立場の自分ですが、記事を読んで思ったことというのが

いくつかあって

 

「仰りたいことはごもっとも。

とってもよくわかるしこうした問題提起も必要だ。

仰る通り細々とした小ロットでの仕入れには手間もかかるしコストもかかる。

でも小売側はそれを十分に理解しながら、それでもなおかつ

小ロットでの仕入れを望んでも仕入れることが出来ないのが現実だ。

 

 「エンドプロダクトを仕入れて、そのものをそのまま売る」という

商品小売というビジネスをする上で日々感じる一種の恐怖、それは

「今日売る商品がなかったらどうしよう」

「サプライ側から仕入れできなかったらどうしよう」

という事だ。

 

その他いろいろ、いろいろ、記事を読みながら考える事がたくさんあったのですが

食品ロスに関することは本当に一度に解決できる問題ではないと思うので

まだまだこれからも考える事や気づくことなども出てくることと思います。

思う事や考えなども多くあるのですが、全部書いたらゴチャゴチャになっちゃうし

今日は上であげた小売側が小ロットでの仕入れを望んでも出来ないのが現実だ

という部分と今日売る物(商品)がなかったどうしようという恐怖という部分に

触れてみようかな。

 

小売側が望んでも難しい小ロットでの仕入れという現実

この小ロットでの仕入れが難しい部分に関しては様々な理由あって

機会があったらまた細かな部分1つ1つ触れてみたいと思うけど、

誤解を恐れずに簡単にわかりやすく文字にするならば、

(香港の場合は)サプライ側が対応体制になっていない。

このサプライ側が対応体制になっていない事が悪いのかといったら

それはそうでもなくて、

商品によっては売れ残ったらメーカーに返品という形がとれる

日本国内でのビジネスとも事情が異なるわけだし、

皆それぞれがそれぞれの立場でのビジネスなのだから

いかに効率よく確実に捌き、いかにコストを減らすかという部分を

考慮しての戦略なのでしょうから、仕方がない。

小ロットで仕入れを希望する小売側が地道に実績を作るなり

仕入れ力をつけるなりしつつ、

話し合いを続けてゆく必要もあるでしょう。

 

小ロットでの仕入れが可能かどうかというのは

小売店が存在する場所そのものにも関連があると思う。

例えば、日本国内であっても地方の小売店でその地区には

主な小売店はA系列とB系列しかない地区の場合

サプライ側としては、その地区で商品を売りたいとしたら

A店とB店に卸す他ないわけで、

小売仕入れ担当者の細かなリクエストも通りやすくなるでしょう。

これが卸し先となるポテンシャルアカウント店が

いくつもいくつも並ぶ地区であるのなら、サプライ側には

ある程度の選択肢もあるわけで、ビジネスをしている以上

手間のかかる(=コストのかかる)小規模小売との関係は

意識していないと徐々に関係が薄れてゆくことも多々あるでしょう。

 

小ロットでの仕入れ、物流というのは、

発注側の小売側だけの手間(=コスト)が増えるだけでなく

メーカー、ロジスティックも含め

サプライ側のコストも当然増えるわけで

一概に発注側の怠慢というものでもないと思うわけです。

 

お店を始める時に、関連しそうな方々にご案内を送った。

面識のあった日本の食品メーカー代理人の方から返信があった。

「何だか、可愛らしいお店ですね、まぁ頑張ってください。」

あらら、鼻で笑われちゃったわと思いつつ、でも、

この方の言葉というのはサプライ側の正直な気持ちだろうなとも思った。

やる気とキャッシュがあれば仕入れができるかと言ったら、

必ずしもそうではない。

 

今日は2017年8月10日。

店舗のあるAp Le Chauには昨年末には地下鉄も通って金鐘から11分。

多くの卸さんが集中する九龍側からのアクセスは抜群に良くなった。

香港系の卸さんの営業さんは何度か店舗に見えたけど

今年に入って早8ヶ月

いわゆる日系大手の卸しの営業さんはどの会社も一度も来ていない。

全く相手にされていないのか、

営業に行かなくてもあそこはオーダーくれるからと思われているのか

小口で納品してやってるんだ、仕入れができるだけ感謝しろと

思われているのか、こちらからオーダーを流したり、

商品の問い合わせをするという一方通行で、

新商品の案内などの情報は先方からは殆ど流れてこない。

それが、現実だ。

 

今日売る物(商品)がなかったらどうしようという恐怖

これはね、自分はこの小売店をやって初めて実感したかな。

香港で小さなレストランを運営していた時にも

商品の卸し側という立場にいた時にも、感じる事のなかった

「今日売る物がなかったらどうしよう」という感覚。

 

『エンドプロダクトを仕入れて、そのものをそのまま売る』という

商品小売というビジネスというのは、

飲食店とも違う、

卸しの立場とも違う

『今日売る商品がなかったらどうしよう』

『サプライ側から仕入れできなかったらどうしよう』

という自分の範疇ではどうにもならない

一種の恐怖と対面することになる、というのを肌で感じた。

 

かつて(食品ではないけれど)卸し側の立場にいた時に

卸先の小売店の香港人オーナーが

「どうしよう、もうほとんどの商品が売れてしまって

売る物がない、どうしよう、どうしよう」と

しきりに心配していたことがあった。

その時に自分は

「売れない在庫が山になっているよりよっぽどいいじゃない!!」

と彼女に言った事を覚えている。

今、そのことを振り返ってみると、自分の幼稚さというか

頭の中にどれだけお花が咲いていたんだろうというか、

こっぱずかしいというか。

飲食店運営の経験はあったものの、当時は小売店というのを

経験した事がなかったし、

「エンドプロダクトを売るはずの小売店が売る物がない状況」

ということの本質を実感できていなかったのだと、今は思える。

 

小売店でありながら、売る物がない??

駄目じゃん、そんなの普通に機会ロス。

そういう事じゃ、ないのよね。

世の中の経済関連の記事や本の中には度々登場する「機会ロス」

でもね、何と言いますか

小売店で売る物がない、ありあまるほどのキャッシュを持っていても

何かしらの理由により仕入れ作業がうまく整わず売る物がないという、

その状況は「機会ロス」という何となく薄っぺらな感じに響く

そんな言葉で現わすことができるものではないと、今は言えるかな。

 

売る物がなくて所々ある空っぽの棚。

そのスペースは目に見える事のない莫大なコストの上に存在している。

空っぽのまま、顧客満足度を高められるかどうか、その事に関しては

顧客満足度に繋がる部分を何と考えるかによって変わると思うから

各店がそれぞれ考えればいいと思うけど、

自分が「空」のスペースを見て思うのは、

大切なスタッフやスタッフの家族を養っていけるのかという部分。

空のスペースというのは、スタッフの生活に直結している部分だと思うんだ。

 

今日は仕入れが少なかったから、パートさん休んでください。

今日は時化でお魚少なかったから鮮魚部は今日の内にみんな休んじゃって。

そう簡単にスタッフにお願いできる事でもないだろう。

 

お店自体が自社物件や、地価の比較的安い地区での賃貸であれば

その空スペースが受け持つコストの額というのは低く抑える事が出来るけど、

世界一高い賃貸料の地区の1つとなった香港で

小売業が棚を空っぽにしていたら、その運営自体もなかなか難しいだろう。

強いてはスタッフの整理やお店の清算という事へも繋がりかねない。

 

それぞれの立場で、それぞれ異なる問題と対面しているのですよね、きっと。

 

「食品ロス問題」に立ち向かうべき人は誰なのか?

今回の「食品ロス」問題というのは会社単位だけでなく、

1人1人が日常生活の中で意識していかなくては変えられない事だと思うし、

今、21世紀のこの時代にリアルタイムで行われている

中国やその他の国々、特にビュッフェスタイルの店で見かける

「食べきれるはずもない量の食べ物をもてあそぶ行為」

それはね、20代、30代前半の方々には想像できないかもしれないけど

ほんの20年とか25年くらい前まで、日本でもあった事なんだ。

だから、国によっては、何というのかしら、今時の言い回しで表現してみると

「国全体の民度の向上」というのを

若干時間をかけて待たなければならない事もあると思う。

経済的に豊になるにしたがって

「物が溢れている状況」

「誰かが持っているものは自分も持ってる状況」

という事に満足感や安心感を覚える人々というのは、

どの時代でも、どの場所でも、ある一定数存在していて

それはどの国もきっと同じなんだよね。

 

 

食品ロス専門家、井上女史によるこの記事。

news.yahoo.co.jp

 今回はたまたま福岡や京都の小売店を例にとって書かれていているので

このブログでは「福岡や京都だから成り立ってるんだろっ!」

という事を言いたいのかと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが

そうではありません。

福岡のマルマツさんも、京都の八百一本館さんも

それはそれは大変な努力とご苦労をされていることと思うし、

なかなか簡単にできることではない事は、

小売を営む方々にはすぐにわかると思います。

 

食品ロス問題。

私達一人ひとりこれから先も日常的に考えてゆくべき問題。

とても考えさせられる記事だったので、皆さまも是非に!

news.yahoo.co.jp

 

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